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健康診断の「肝機能」、季節で変わるって知っていますか?【第1回】季節によって結果が変わるシリーズ(脂肪肝) 健康診断の「肝機能」、季節で変わるって知っていますか?【第1回】季節によって結果が変わるシリーズ(脂肪肝)

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健康診断の「肝機能」、季節で変わるって知っていますか?【第1回】季節によって結果が変わるシリーズ(脂肪肝)

健康診断の「肝機能」、季節で変わるって知っていますか?【第1回】季節によって結果が変わるシリーズ(脂肪肝)

― 脂肪肝とAST・ALTの意外な関係 ―

「健康診断で肝機能が引っかかった……」

「ASTとALTが少し高いけれど、去年も同じくらいだったから大丈夫だろう」

「夏の健診では正常だったのに、冬になると肝機能が高くなった」

そんな経験はありませんか?

実は、ASTやALTなどの肝臓の数値には、季節による変動があることがわかってきました。

2026年に日本人の2型糖尿病患者6,039人を対象として行われた研究では、ASTとALTが一年を通じて一定ではなく、晩秋から初冬に高くなり、夏に低くなるという季節性が確認されています。

しかも、この季節変動は7年間にわたって繰り返し観察されました。

では、これは「冬に肝臓が悪くなる」という意味なのでしょうか?

今回は、健康診断で「肝機能異常」を指摘された方に知っていただきたい、脂肪肝と季節の関係について解説します。


「肝機能の数値」は一年中同じではありません

健康診断でよく測定されるAST、ALT。

これらは肝細胞の障害などを反映する血液検査です。

特にALTは、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)を評価する際にも重要な指標の一つです。

ところが、今回の研究では、

秋〜初冬:高くなる

↓

夏:低くなる

という季節パターンが、AST・ALTの両方で確認されました。

つまり、

同じ人でも、血液検査を受ける季節によってAST・ALTの値が少し違うことがある

ということです。


さらに驚くのは「脂肪肝の判定」への影響

今回の研究では、AST・ALTについて30 IU/Lを一つの判断基準として、冬と夏で判定が変わるかどうかを調べています。

すると、年間平均値が基準値付近だった人では、ALTについて約9人に1人(11.4%)が、冬と夏で「基準を超える/超えない」の判定が変わっていました。

これは非常に興味深い結果です。

例えば、

夏に検査したら「それほど高くない」

↓

冬に検査したら「ALTが高い」

ということが起こり得るわけです。

反対に、夏の検査だけを見て「問題なさそう」と判断してしまう可能性もあります。

ただし、ここで重要な注意点があります。

「季節によって数値が変わる」=「脂肪肝が季節によって治った・悪化した」

という意味ではありません。

今回の研究は、AST・ALTの季節変動を示した観察研究です。

季節変動がなぜ起こるのか、どの要因がどの程度関係しているのかについては、今後さらに研究が必要です。


「夏に正常だったから大丈夫」は危険です

ここは、ぜひ覚えておいてください。

ASTやALTが正常だからといって、脂肪肝や肝臓の線維化を完全に否定できるわけではありません。

脂肪肝では、肝臓に脂肪が蓄積していても肝酵素が正常なことがあります。

さらに、進行した肝線維化があってもAST・ALTが正常なケースがあります。

AASLD(米国肝臓学会)のガイダンスでも、アミノトランスフェラーゼが正常であることだけを根拠に、進行した肝疾患を否定してはいけないとされています。

だからこそ、

「肝機能の数値が正常だった」

だけではなく、

「自分の肝臓に脂肪がついていないか」
「肝線維化が進んでいないか」

まで考えることが大切です。


脂肪肝は「お酒を飲む人だけ」の病気ではありません

「脂肪肝」と聞くと、

「お酒をたくさん飲む人の病気でしょう?」

と思われる方も少なくありません。

しかし、現在注目されているのがMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)です。

肥満、糖尿病、血圧、脂質異常症などの代謝異常と脂肪肝は深く関係しています。

つまり、

  • お腹周りが気になる
  • 血糖値が高い
  • HbA1cが高い
  • LDLコレステロールが高い
  • 中性脂肪が高い
  • 血圧が高い

という方は、肝臓にも目を向ける必要があります。

特に2型糖尿病の方は、脂肪肝だけでなく、進行した肝線維化のリスクにも注意が必要です。

AASLDでは、糖尿病などの代謝リスクを持つ人では肝線維化の評価を行うことが推奨されています。


「AST・ALT」だけでなく「肝線維化」もチェック

脂肪肝の評価で重要なのは、肝臓に脂肪があるかどうかだけではありません。

もう一つ重要なのが、

「肝臓が硬くなっていないか?」

ということです。

脂肪肝の一部では、長い年月をかけて肝臓の線維化が進み、将来的に肝硬変などにつながる可能性があります。

そこで、血液検査から簡単に計算できる指標の一つがFIB-4 indexです。

FIB-4は、

  • 年齢
  • AST
  • ALT
  • 血小板数

から計算します。

AASLDでは、FIB-4を肝線維化リスクを評価するための初期評価として位置づけています。

つまり、

AST・ALTを見る

↓

脂肪肝の可能性を考える

↓

必要ならFIB-4などで線維化リスクを評価する

という流れが重要になります。


では、健康診断で「肝機能異常」と言われたら?

ここで大切なのは、

「季節のせいだろう」と自己判断して放置しないこと。

今回の研究が教えてくれるのは、

肝機能の数値には季節変動がある

ということです。

しかし、

だから異常値を放置してよい

ということではありません。

むしろ、健康診断で異常を指摘された場合には、

① AST・ALTはどの程度高いのか

② γ-GTPなど他の肝機能検査はどうなのか

③ 肥満・血糖・血圧・脂質異常症などの代謝リスクはないか

④ 脂肪肝がないか

⑤ 肝線維化のリスクはないか

を総合的に評価することが大切です。


「去年は正常だった」も、一度確認してみましょう

健康診断の結果を見るとき、

「去年は大丈夫だった」

という理由で安心してしまうことがあります。

しかし、肝臓の状態は一年で変化することがあります。

また、今回の研究からは、同じ人のAST・ALTでも季節によって変動する可能性が示されています。

だからこそ、一回の数字だけを見るのではなく、

「これまでの検査結果を並べてみる」

ことが重要です。

例えば、

2024年 夏 → ALT 28

2025年 冬 → ALT 36

2026年 夏 → ALT 29

という結果だったとしたら、

「一度だけ少し高かったから問題なし」

と決めつけるのではなく、季節や経年的な変化を含めて評価するという視点が役立ちます。


健康診断は「異常値を探す」だけではありません

健康診断で大切なのは、

「基準値から外れたかどうか」だけを見ることではありません。

検査結果を時間軸で見て、

「自分の身体がどう変化しているのか」

を知ることです。

そして今回の研究は、そこにもう一つ、

「季節」という時間軸

を加える必要性を示しています。

ASTやALTが少し高かった。

でも、

「冬だったからかな?」

と考えて終わるのではなく、

「なぜ高かったのか?」

を一度確認してみる。

それが、脂肪肝や代謝異常を早期に見つけるきっかけになるかもしれません。


まとめ

今回のポイントをまとめます。

POINT 1

AST・ALTは一年中一定ではありません。

晩秋〜初冬に高く、夏に低くなる季節変動が報告されています。

POINT 2

ALTが基準値付近の人では、検査する季節によって判定が変わることがあります。

今回の研究では、境界域の患者さんの約9人に1人で、冬と夏の判定が異なりました。

POINT 3

肝機能が正常だからといって、脂肪肝や肝線維化を完全に否定できるわけではありません。

POINT 4

健康診断で肝機能異常を指摘されたら、「季節のせい」と決めつけず、一度きちんと評価することが大切です。


「肝機能が少し高いだけだから……」と放置していませんか?

脂肪肝は、初期には自覚症状がほとんどありません。

だからこそ、

「症状がないから大丈夫」

ではなく、

「健康診断で指摘された今、確認しておく」

ことが大切です。

AST・ALTなどの血液検査だけでなく、体重、血糖、脂質、血圧などを含めて身体全体の状態を確認することで、脂肪肝や代謝異常のリスクをより適切に評価できます。

健康診断の結果について気になることがあれば、「これくらいなら大丈夫だろう」と自己判断せず、医療機関にご相談ください。


参考文献

  1. Toki R, Sakamoto M, Yuki M, et al. Within-Person Seasonal Variability of Aminotransferases and Long-Term Glycemic Control in Adults With Type 2 Diabetes (JDDM 85). Liver International. 2026;46(7):e70743.
  2. Rinella ME, et al. AASLD Practice Guidance on the clinical assessment and management of nonalcoholic fatty liver disease. Hepatology. 2023.

本記事は医学的な情報提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療を目的とするものではありません。症状や治療についてはかかりつけの医師・専門医にご相談ください。


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