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ダイエット成功者とは?——あなたのダイエットは「やつれる」ですか?「しぼる」ですか?

ダイエット成功者とは?——あなたのダイエットは「やつれる」ですか?「しぼる」ですか?

はじめに:あなたが目指しているのは、どちらですか?

「ダイエットに成功した」という言葉を聞いたとき、あなたはどんな状態を思い浮かべるでしょうか。

「体重が減った状態」、そう考える人が多いのではないかと思います。

実はここに、ダイエットにまつわる最大の混乱が潜んでいます。多くの人が「痩せる」という言葉をひとつの目標として語りますが、医学的に見ると「痩せる」には、まったく異なる2つの方向性があるのです。

「やつれる」ダイエットの正体

極端な食事制限や過度な有酸素運動によって短期間で体重を落とすと、失われるのは脂肪だけではありません。

筋肉(除脂肪体重)が分解され、骨密度が低下し、内臓は萎縮します。顔はこけ、皮膚はたるみ、血色を失います。体重計の数字は確かに減りますが、これは「やつれた」状態です。

「やつれる」ダイエットは、体を救うのではなく、消耗させます。

「しぼる」ダイエットとは何か

医学的に見て望ましいのは、体脂肪を選択的に減らしながら、筋肉量・骨密度・代謝機能を維持・向上させることです。これを「しぼる」と表現します。

体組成の改善を指す言葉として、英語では “body recomposition”(ボディ・リコンポジション)が使われます。体重の絶対値よりも、脂肪と筋肉の比率(体脂肪率)が重要な指標となります。

「しぼる」ダイエットに必要な要素を簡単に整理するとこうなります。

①適切なタンパク質摂取
筋肉の維持・合成には、体重1kgあたり1.2〜2.0gのタンパク質摂取が推奨されています(Stokes et al., 2018, Nutrients)。

②適度な有酸素運動と筋力トレーニング
有酸素運動に加え、週2〜3回の抵抗運動(筋トレ)が除脂肪体重の維持に有効であることが複数のRCTで示されています。

③糖質・精製された炭水化物・超加工食品の制限
血糖値スパイクを起こすこれらの食品は、高インスリン血症を招きます。インスリンには脂肪合成促進・分解抑制作用があります。これらの食品は控える、あるいは食べ方を見直すことが重要です。

「一時的」か「継続」か——この問いこそが核心

ここに、もうひとつの本質的な問いがあります。

体重を落とすことは、それ自体はそれほど難しくありません。問題は、維持できるかどうかです。

ダイエット研究における最も悲しいデータのひとつは、「減量に成功した人の多くが5年以内に元の体重に戻る」という知見です。Wing & Phelan(2005, Am J Clin Nutr)のレビューによれば、長期的な体重維持に成功するのは全体の約20%にすぎません。

では、その20%は何が違うのか。同論文の分析では、以下が共通していました。

  • 朝食を摂る習慣
  • 週に約1時間の中〜高強度身体活動
  • 週1回以上の体重測定による自己モニタリング
  • テレビ視聴時間の制限

注目すべきは、これらがすべて「行動習慣」であることです。成功した人は「努力してダイエットを続けている」のではなく、「ダイエット行動が、習慣として定着していた」のです。

「ダイエットの成功」をどう定義し直すか

ここまでを踏まえ、医学的に見た「ダイエットの成功」の定義はこうなります。

体脂肪を選択的に減らし(しぼる)、その状態を無理なく維持できている(継続)こと。

「やつれる×一時的」なダイエットは、医学的には失敗とみなすのが正確です。見た目が一時的に変わっても、健康は損なわれ、すぐに元に戻るからです。

そして今、あなたはどう思いますか——「痩せる注射」の話

ここ数年、ダイエットの世界に大きな変化が起きています。

GLP-1受容体作動薬と呼ばれる薬の登場です。セマグルチド(商品名:オゼンピック、ウゴービ)やチルゼパチド(商品名:マンジャロ、ゼップバウンド)といった薬剤は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、その強力な体重減少効果から、肥満症治療薬としても急速に普及しています。

仕組みを簡単に説明すると、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は食後に腸から分泌されるホルモンで、脳の視床下部に作用して食欲を抑制し、胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を長引かせます。これを薬で持続的に再現するのがGLP-1受容体作動薬です。

臨床試験のデータも印象的です。セマグルチドを用いたSUSTAIN・STEP試験などでは、68週間で平均約15%の体重減少が報告されており、これは従来の肥満治療薬をはるかに上回る数値です(Wilding et al., 2021, NEJM)。

芸能人や著名人の使用が話題になり、「打つだけで痩せる夢の薬」として注目を集めているのも事実です。実際、SNSでは「オゼンピックフェイス」という言葉まで生まれました。顔がげっそりとこけた状態を指すこの言葉は、あの「やつれる」という問いと、どこかで響き合います。

また、見落とせないデータもあります。GLP-1受容体作動薬による減量においても、失われた体重に占める除脂肪体重(筋肉)の割合は相当数にのぼるという報告があり、筋力トレーニングや十分なタンパク質摂取を組み合わせない場合、筋肉量の低下が懸念されています(Wilding et al., 2021; Bikou et al., 2024)。

そして、もうひとつの問題があります。薬をやめると、体重は戻ります。

セマグルチドの投与を中止した患者を追跡したSTEP 1拡張試験では、中止後1年で減量分の約3分の2が回復したことが報告されています(Wilding et al., 2022, Diabetes Obes Metab)。これは偶然ではありません。GLP-1受容体作動薬は食欲や代謝を「薬理学的に上書き」しているにすぎず、薬をやめれば体はもとの食欲調節システムに戻ります。行動習慣や体組成の根本的な変化を伴わない限り、体重もまた、元の水準へと引き戻されていくのです。

つまりこの薬は、「継続して使い続ける」ことを前提とした治療ツールであるとも言えます。それ自体は医療として正当な選択肢です。ただし「一時的に使って痩せる」という目的で用いるなら、冒頭で述べた「一時的なダイエット」と本質的には変わらない結果になりうる——そのことは、知っておく必要があります。

最後に、あなた自身に問いかけてみてください

GLP-1受容体作動薬は、確かに強力な医療ツールです。肥満に伴う糖尿病・高血圧・脂質異常症のリスクを下げる効果は、医学的にも無視できません。否定するつもりは、まったくありません。

ただ、この記事を読んだ今、もう一度だけ考えてみてほしいのです。

「打つだけで体重が落ちるダイエット」は——

「やつれる」ですか?「しぼる」ですか?

「一時的」ですか?「継続」ですか?

答えは、あなたの中にあるはずです。

参考文献

  • Stokes T, et al. (2018). Nutrients. 10(2):180.
  • Wing RR & Phelan S. (2005). Am J Clin Nutr. 82(1 Suppl):222S-225S.
  • Wilding JPH, et al. (2021). N Engl J Med. 384:989-1002.
  • Bikou A, et al. (2024). Curr Obes Rep. (GLP-1RA and lean mass loss review)
  • Wilding JPH, et al. (2022). Diabetes Obes Metab. 24(8):1553-1564.

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