コラム健康づくり診療ブログ運動器 (首肩・膝・腰) 内科外来
あなたのその慢性的な筋骨格系の痛み、脂肪のためかもしれませんよ!?
一見すると全く無関係に思える脂肪と慢性的な筋骨格系の痛み。
しかし驚くことに、脂肪が多ければ多いほど、多部位で広範囲にわたる慢性的な筋骨格系の痛みの発症に関与している可能性があるとする研究結果が発表されました。
脂肪といえば、高血圧症や糖尿病など、内蔵疾患のイメージが強いと思います。
それだけではなく、筋骨格系の痛みにも関与するとなると、放って置くわけにはいきません。
まずは研究内容を見てくださいね。
原文はこちら。
MRI-derived abdominal adipose tissue is associated with multisite and widespread chronic pain
研究結果のまとめ
要約: この研究は、内臓脂肪と皮下脂肪が多部位および広範な慢性筋骨格痛と関連しているかどうかを調査しました。UKバイオバンクのデータを使用し、腹部MRIスキャンで脂肪量を測定しました。解析の結果、脂肪量が多いほど慢性痛の部位数が増加し、特に女性でその傾向が強いことがわかりました。
序論: 筋骨格痛は通常、複数の部位に発生しますが、過剰な内臓脂肪および皮下脂肪が筋骨格痛と関連しているかどうかを調べた研究はありません。この研究は、MRIで測定した腹部脂肪組織と多部位および広範な慢性筋骨格痛との関連を説明することを目的としています。
方法: 大規模な前向きコホート研究であるUKバイオバンクのデータを使用しました。腹部MRIスキャンは2回の画像診断訪問で実施され、内臓脂肪および皮下脂肪を定量化しました。対応する訪問で首/肩、背中、股関節、膝、または「全身」の痛みが評価されました。混合効果の順序/多項/ロジスティック回帰モデルを使用して解析を行いました。
結果: 合計32,409人の参加者が含まれました(女性50.8%、平均年齢55.0±7.4歳)。多変量解析では、内臓脂肪、皮下脂肪、およびその比率と慢性痛部位数との間に用量反応関係があることが示されました。女性では内臓脂肪: OR 2.04/SD (95% CI 1.85-2.26)、皮下脂肪: OR 1.60 (95% CI 1.50-1.70)、比率: OR 1.60 (95% CI 1.37-1.87)、男性では内臓脂肪: OR 1.34 (95% CI 1.26-1.42)、皮下脂肪: OR 1.39 (95% CI 1.29-1.49)、比率: OR 1.13 (95% CI 1.07-1.20)でした。脂肪量が多いほど、慢性痛を報告する確率が高くなりました。これらの脂肪測定の効果推定値は、男性よりも女性で相対的に大きかったです。
結論: 腹部脂肪組織は慢性筋骨格痛と関連しており、過剰な脂肪沈着が多部位および広範な慢性筋骨格痛の病因に関与している可能性があります。女性での効果が男性よりも強いことは、脂肪分布やホルモンの性差を反映している可能性があります。
私の視点
お腹の脂肪が増えてくれば、当然、体重が増えます。
そうすると体重を支えている足、特に膝関節、大腿や下腿などの筋肉に負担がかかり、痛みが出てくることは想像できるでしょう。
しかし、この研究では首や肩など、お腹の脂肪を支えていないような部位にも痛みが増えています。
これは単純に体重増加では説明できないですね。
内臓脂肪や異所性脂肪があると、慢性的な炎症が出現します。
その炎症に伴って痛みが誘発されているのでしょうか。
いずれにしても、過剰な脂肪は健康に良くないことは確かです。
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