予防接種診療ブログ
認知症を予防できるかも?!あるワクチンに迫る!
超高齢化社会の日本では認知症は非常に問題となっています。
本人の尊厳性が失われることはもとより、介護による周囲への負担は計り知れないものです。
事実、介護を負担に親を殺すような犯罪も起きています。
介護施設で介護を受けようと思っても、実情としては介護職員が不足しています。
介護保険に関わる財源はどうなるのでしょう?
少子化して人数が減っている若者に、このまま負担をかけ続けるのでしょうか?
このように認知症は個人的にも社会的にも問題となるのです。
でも、もし認知症がワクチンで予防できるとしたら、個人的にも社会的にも大きなメリットがありそうですね。
認知症がワクチンで予防できるかも知れないという研究をご紹介します。
認知症の原因
認知症といってもさまざまな種類があり、
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症
- 血管性認知症
- 前頭側頭型認知症
が代表的です。
もちろん、それぞれの病気で原因が異なります。
一つの原因で起こるわけではありません。
いろいろな研究が進むなかで、
「アルツハイマー認知症の病因(の一つ)はヘルペスウイルス感染症である」
という研究結果があります。
Vaccines 2021; 9:679
https://doi.org/10.3390/vaccines9060679
筆者のイギリス・オックスフォード大学のルース・イザーキ教授によれば、
単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)とアルツハイマー型認知症との関係には
圧倒的なエビデンス(証拠となるような研究結果)があるようです。
また水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)と認知症との関係についてもエビデンスが出てきているようです。
ヘルペス感染症に対し適切な治療(抗ウイルス薬)を受けなかった群では
認知症の発症リスクが高まるということもわかってきているようです。
コロナ流行した昨今、口唇ヘルペスや帯状疱疹を発症している人が多くなっています。
これらの人に適切な抗ウイルス療法を行えば、将来発症する認知症を抑制できる可能性が高まります。
しかし、抗ウイルス薬は内服薬です。
長期に飲み続けるにはコストパフォマンスが悪く、高齢者など対象を限定する必要がありそうです。
そこで、ワクチンになるわけです。
ワクチンであれば、1回接種すれば、ある程度の期間は効果を発揮することができます。
ワクチンで効果があることが示されれば、それは個人的にも社会的にも意味のある治療になりえます。
帯状疱疹ワクチンによる認知症発症抑制効果
認知症との関連性のエビデンスが強い単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)には、
残念ながら現時点でワクチンがありません。
しかし、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)にはワクチンがあります。
スタンフォード大学の研究グループが
「帯状疱疹ワクチンには認知症予防効果がある」
とする研究結果を発表しています。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2023.05.23.23290253v1
未査読論文(第三者が評価していないため、独りよがりになる可能性がある)ではありますが、
非常に期待させられる結果ですね。
以下がメインのグラフになります。
認知症の発症率を見ているものです。
点線をまたぐとガクッと認知症の発症率が下がります。
普通だと、年齢を重ねるごとに徐々に認知症発症率が高まるはずです。
突然、このような段差ができるのは明らかにおかしいのです。
この点線は「法律的に帯状疱疹ワクチンを受けることができたかどうか」の境界です。
点線の前ではワクチン接種率は0.01%、点線の後では47.2%と有意な差があります。
ということは、帯状疱疹ワクチンを接種すれば認知症の発症率が下がると考えられますね。
さらに詳細に解析すると、この効果は女性に認められるが、男性には認められないようです・・
・・残念至極!
とは言え、長生きして認知症の人が多のは女性というのも事実。
その人達が少しでも減って、尊厳のある人生を送ってもらえると嬉しいですね。
日本で取り扱っている帯状疱疹ワクチンは、アメリカのものと同じものではありません。
が、きっと同じような効果はあるのではないかと思っています。
当クリニックでは帯状疱疹ワクチンの接種を行っています。
ワクチンの取り寄せが必要ですので、電話で予約をお願いします。
詳細はホームページの予防接種外来を見てくださいね。