一般内科・ かぜ予防接種診療ブログ
デルタ株はウィズコロナ時代到来の兆しかもしれない:ワクチン接種と死者数の変化
新型コロナウイルス感染者があっという間に増え、いわゆる「第5波」が到来しています。
しかも、その感染者数は最多数を日々更新していますね、マジでやばい!!!
東京の方では重症者を受け入れるためのベッドが足りなくなっていると聞きます。
これは医療崩壊が起こっていることになりますね。
福岡がこのような事態に陥らなかればいいのですが・・・
この「第5波」はこれまで以上に他人事じゃないと感じています。
私が診療に関わっている施設でもクラスターが発生したり、比較的身近な人に感染者がいたりと、これまでの様相とは違い身近に感じます。
地域で発生したクラスターを見ていると、一つのクラスターで発生する感染者数が以前よりも明らかに多く、現在流行している
デルタ株の感染力の強さ
が伺い知れます。
あなたも自覚していると思いますが、このデルタ株は感染力が半端ないです。
ある研究によるとすれ違っただけでも感染する可能性があるとか・・・
これは日本だけの話でなく、デルタ株の流行により各国で新型コロナウイルス感染者が増加しています。
そんな流行状況のなか、あなたは「何とか早くワクチン接種が受けられないか」とワクチン接種の予約に忙しい毎日を送っているかもしれません。
新型コロナウイルスに対するワクチンの効果は別の記事で書いてきましたが、そろそろ知識を更新しないといけないようです。
それはデルタ株の流行に他なりません。
デルタ株は明らかに従来株とは状況が異なります。
ここでイギリスを中心に各国の新型コロナウイルスの新規感染者数および死者数の推移を参考にしながら、最近流行しているデルタ株の特徴をお伝えしたいと思います。
イギリスでは成人の約88%が1回目の接種を終え、約68%が2回目の接種を終えていると言われています。
従来株であれば約50%以上の人がワクチン接種を終えれば感染流行が抑えられると考えられており、
事実、イギリスの新型コロナウイルス感染者数は劇的に減少していました。
しかし、デルタ株流行とともに新型コロナウイルス感染者数が増加しています。
ということは、「感染予防」という視点からワクチン接種の効果を見ると、
デルタ株に対してはワクチン接種による感染予防効果は乏しい
と考えざるを得ません。
ウイルス変異の問題だけではなく、投与時期による抗体価の低下などいろいろな要素はあるかもしれません。
実験的には従来株より効果は多少劣る程度と言われていますが、現状を考えると不十分な効果であることは間違いなさそうです。
また、アメリカでの話にはなりますが、米国疾病予防管理センター(CDC)の発表によると、
マサチューセッツ州で7月3~17日に発生したクラスター感染のうち、73.8%(469人中346人)がワクチン接種完了者だったと報告されています。
マサチューセッツ州におけるワクチン接種率がどのくらいあるのかわかりませんが、新型コロナウイルス感染者におけるワクチン接種完了者の割合があまりにも高い!!!
仮にマサチューセッツ州のワクチン接種率が90%と高い状態だったとしたら、ワクチン接種のよる感染予防効果はわずかに16.2%ということになります。
もしワクチン接種率が70%だったとしたら?もっと低い60%だったとしたら?
ワクチン接種による感染予防効果は-3.8%、-13.8%ということになります。
実際のワクチン接種率はせいぜい後者ぐらいで高くないと推察しますので、ワクチン接種で新型コロナウイルスの感染を抑制しているどころか、
むしろ、感染を拡大しているのではないかと疑うような数字です。
日本においてもワクチン接種が感染予防には不十分であると思われる事態が起きています。
ある職場において、全員がワクチン接種を完了しているにも関わらずクラスターが発生したり、クラスターにおけるワクチン接種率が高かったりと同じような事例が存在します。
ということで、
デルタ株に対するワクチン接種はあまり効果がない、むしろ感染を拡大させている可能性も否定できない
と考えられます。
※従来株については十分に効果がありますよ。
なぜそのようなことが起きるのか?
明らかなことはわかっていませんが、
- ワクチン接種をすることで新型コロナウイルスにかかっていても症状が出ず、知らないうちに感染を拡大させている
- 抗体依存性感染増強(不完全な抗体があると返って感染しやすくなる)とい病態があるのではないか
という推察がされています。
原因はともかく感染予防効果が担保されていないことに変わりはありません。
ワクチンパスポート制度を作ろうとしているようですが、経済効果は期待できても感染予防の観点からは悪政でしょうね・・・
一方で、「死亡率」という視点からデルタ株を見るとどうでしょう。
こちらのグラフを見て下さいね。
イギリスにおける新型コロナウイルスの新規感染者数と死者数の推移です。
まず左にある新規感染者数のグラフを見て下さい。
最近のピークはデルタ株による感染拡大を表していると考えて構いません(デルタ株の陽性率95%以上)。
ワクチン接種によって抑えられた新規感染者数ですが、デルタ株の流行によって新規感染者数が増加したのが一目でわかります。
一方で、右のグラフの死者数はどうでしょう?
デルタ株に相当するピークがありませんね。
新規感染者数と死者数のピークのズレが2週間ほどありますが、それを差し引いてもピークがありません。
これをどう考えるか?
一つはワクチン接種によって重症化が抑えられているという可能性です。
しかし、もしワクチン接種で重症化が抑えられるのであれば、新規感染者数を抑える効果もそれ相当にあるはずです。
新規感染者数の推移は、タイムラグはあるにせよ、死者数の推移ともっとパラレルな動きになっていいようにも思います。
もう一つの可能性は(どちらかというとこちらではないかと考えていますが)、
デルタ株の感染力は強いが、毒性は弱い
というものです。
一般的にウイルスは感染力、毒性ともに強いものはなく、感染力が強いか毒性が強いかのどちらかです。
新型コロナウイルスは例外と言えば例外とも言えますが・・・
感染力が強まれば毒性が弱くなる可能性は十分にあります。
過去の感染症も、感染力は強いが毒性が弱いタイプのウイルスが流行することによって集団免疫を獲得し、流行が収まっていくという経過があります。
イギリスではこのような状況を参考に(経済的な配慮もあると思いますが)、これまでに行ってきたロックダウンなどの感染対策は中止されたのだと推察しています。
全く犠牲がないわけではないが少ない犠牲は織り込み済みで集団免疫を獲得し、流行を納めることで新たな「ウィズコロナ時代」へ突入しようと考えているのだと思います。
日本ではどうか?
日本のワクチン接種はイギリスほど進んでいませんが、もしデルタ株の毒性が弱いのであれば、新規感染者数が多くても死者数はあまり増えないはずです。
ここ最近でデルタ株が半数以上になってきていますが、日本の新規感染者数と死者数はどうなっているでしょう。
新規感染者数 | 死者数 | 致死率 | |
2021年5月 | 153,737名 | 2,817名 | 1.83% |
2021年6月 | 53,109名 | 1,724名 | 3.25% |
2021年7月 | 126,610名 | 409名 | 0.32% |
2021年7月になり、突然、致死率が下がっています。
治療法の開発も進んでいますので、治療による致死率低下の可能性はありますが、1ヶ月で突然低下するでしょうか?
そんな劇的に効果が出る薬が認可されたという話はありません。
感染者が若年化しているから?
可能性はありますが、1ヶ月で突然低下するでしょうか?
他にも原因はあるかもしれませんが、日本人においてもデルタ株が弱毒化されていることを示している可能性はあると思います。
しかも、新型コロナウイルスに対する治療法の開発も徐々に進んでいます。
治療により今よりも死者が出る可能性はより低くなってくるはずです。
新型コロナウイルスの弱毒化や治療法の開発で、日本も「ウィズコロナ時代」に向けて政策転換を行ってもいい時期がやって来そうです。
今後の死者数、死亡率の推移に注目しましょう。
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